山口みいな個展「ユンクス・エフスス・スピラリス」
2023/02/03 - 19
@GALLERY SCENA. by SHUKADO
日常を祝福するように、その場所や身の回りのものにドローイングをする山口みいな。作品と作品の境界線は曖昧で、自由にひろがる線やおおらかに表現されるかたちが軽やかに絡み合う。空間を自由自在に駆け巡る山口の作品世界を是非お楽しみいただきたい。
展覧会のタイトルは、観賞用の植物として流通している螺旋藺の学名に由来する。螺旋状に伸びる特徴的なその茎は、山口の引く線に似ており、日々の暮らしをより好ましいものに変えてくれるという点でも、山口のドローイングを象徴するような存在である。
今回の展示では、美術批評家の飯盛希をゲストキュレーターとして迎え、作品の「意味」を「美術史的文脈」ではなく「ウェルビーイング」の観点から捉えなおす。日常を祝福するような山口のドローイングから、コマーシャルギャラリーにおいて、展覧会の会期が修了したあとも続く、作品とその購入者との好い関係を提案する。
日々、線を引いている。
様々なメディアを通して自分から出てくる線を見つめている。
時に布をコンパクトにパッキングし持ち運び、共に旅をするようにして痕跡を残し続けるという作品を制作したり、空気を使って時間の流れの中で変化するという作品を作っている。
空間にとらわれない状態で自分からポロポロと出てくるものを留め続けていくことで、いつしか不意に見える自身の形を確認したい。
線を引くという行為を通して他者とのコミュニケーションを取ったり、生活の中で自身の身の回りに発生するドローイングを発見し探求して行くことをこれからも続けてゆきたいと思う。(山口みいな)
パッキングドローイングシリーズは大きいドローイングを折りたたみ、透明のラミジップでパッキングし作品の1部だけを見せる。鑑賞者はドローイングの全貌を想像したり、続きを創造することもできる。この作品を持って帰った人しか作品の全部を見れない。
ドローイングの折り目を変えて違う部分を見せる事もでき、ラミジップはまるで額縁の様な存在にもなる。ストレージが限られたこの土地で物を作る上で、作品自身の形を変容させるということ。そして生活の中にひっそりと佇むことができるということ。それは自分の制作や人生においても大きなキーとなっている。
飾ってもいいし、持ち運んでもいいし、しまいこんでもいい。どこにいることだってできる。(山口みいな)
山口 みいな YAMAGUCHI Miina
1996年東京都生まれ。2021年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域を修了。折りたたんでコンパクトになるドローイングや、光や時間、空気などを活用したエフェメラルな作品を通じて、私たちが生活する空間に適した新しい絵画のありかたを提示するアーティストである。
飯盛 希 ISAKARI Mare(ゲストキュレーター)
1990年生まれ。専門は美術批評、比較芸術。東京大学教養学部卒。同大学大学院 総合文化研究科修了。ギャラリー発行の展覧会パンフレットや、美術批評誌『MAPPING』(コンテンポラリーアートジャパン)、齋藤惠太[編]『アーギュメンツ』などに寄稿。アシスタント・ディレクターを務める TAV GALLERY を中心に展覧会企画多数。