ART TAIPEI 2021
2021/10/22 - 25
@Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1
秋華洞ブースでは、現代美術、近代、そして江戸美術までの歴史の中で総合的に魅力ある日本美術との世界を紹介する。
現代美人画のアートシーンを牽引する池永康晟。自身で染め上げた麻布に岩絵具で描く女性は独特な質感と芳香を放ち見るものを魅了する。生きるための幻想を与えてくれるオンナを愚直に描き続ける彼の指先は、その命を辿ろうと懸命である。
陳珮怡、私達は彼女を「東洋一の猫描き」と呼んでいる。日本においては画集が発刊されるなど近年台湾と同様に益々人気を集めている。彼女の絵の特徴は、猫を「可愛らしいもの」という定義とか観念から解き放っているところにある。猫と共に生き、猫たちのありのままの姿を描く。その向こうには猫への愛情が見えてくる。
北海道の地において、ほぼ独学で日本画の古典技法を学んだ蒼野甘夏は、伸びやかで繊細な筆致で独自の幻想世界を描く。妖精のように描かれる女性たちは、性別の矩さえも乗り越えて自由自在に空間を飛び回る。古事記などの伝説に材を採ることも試みる彼女は、「日本画」の今日的可能性を拡げるフロントランナーとして貴重な存在である。
2017年から中国北京で人形制作と発表を始めたdaikichiは、一般的なイメージの芸術家とは異なる。当初、彼の発表の場はフィギュアの世界であった。だが彼の造形はフィギュアの世界のステレオタイプとは無縁の新鮮な美しさを表現している。指先、足、目、唇、歯と歯茎、舌などが響鳴して独自のリアリズムをなし、艷やかな美しさで見るものを魅了する。
友沢こたおは日本の有名でマニアックな漫画専門誌「ガロ」に漫画を掲載していた母「友沢ミミヨ」とフランス人の父の間に生まれた。その思考はいかなる文化にも属さない自由なものだ。B級恐怖映画を含むあらゆるジャンルの映画を幼少から見て育った彼女の発想と技術は、ほとんどの日本人アーティストの能力を飛び越えて、アートの未来を感じさせる精妙さとスピード感を兼ね備え、「見る」快感を加速させる。
アートは枠の中で「何か」を表現するが、それは枠の外にある「現実」や「概念」との繋がりからもたらされる。吉田樹保の場合は、ときにその興味は風俗の古層に向かう。日本人はこれまで如何に生と死に向かい合ってきたか。ジャーナリストのような取材から彼女のアートは立ち上がってくる。一方で、その表現はあくまで軽やかでキッチュな体裁を見せて、セクシュアルでダークな凶暴さをも感じさせる。