”What do the Artists see?”
The Joint exhibition of OZU Wataru, KASAI Akukio, and KONDO Ami
13 - 28 Jan 2023
@GALLERY SCENA. by SHUKADO
GALLERY SCENA では、令和五年の皮切りの展覧会として、小津航・葛西明子・近藤亜美の三人展を行います。
今回の企画の特徴は、作家が目に見える「光景」をどのように「絵画」の画面に落とし込むのか、という批評性です。私達は、目で見る事物をメモするのに、しばしばスマホのカメラを使いますが、「絵画」というものは、当然ながら自由に色と形を描写できるのであり、「目で見たもの」と「描かれたもの」が同じである必要もないし、同じであってはいけない、ともいえます。
そのとき、「描く主体」は、「絵画」が「絵画」であるための、必要条件は何なのか?という問題に突き当たります。
今回、招聘した三人の画家は、いずれも「光景(風景ないし静物)」を「絵画」に定着させる際に、自分の「様式」を強く持って、「絵画性」を担保しています。
結果として、鑑賞者である私たちは「心地よさ」であったり、反対に「居心地の悪さ」を感じたりするわけですが、画家の側は、直感あるいは理論を持って「構図」という仕掛けをしてくるわけです。そのなかには、私達鑑賞者が簡単には見抜けない「計算」があり、画家に話を聞くと、意外な答えが返ってくることもあります。
私たちは、「絵画」というものにどのように感情を受け、画家たちはどのような視点でその感情を演出しているのか?
三人三様のスリリングなドラマをお楽しみください。
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ドローイングと絵画、それらとイメージの関係を探りながら制作する小津航、油彩・アクリルで夜の光の世界を描く葛西明子、鮮やかな色彩と遊び心溢れる構図で「日常と非日常の挟間」を描く近藤亜美。
今回の展示で、私達がもっとも着目したのが、小津航の絵画観でした。OJUNに憧れて大学で学んだ小津の作品は、かなり明解な絵画観があり、非常に引き込まれるものでした。 彼の示した作品に、鳥がテーブルに逆さまに立っていて、なぜか矢が三本刺さっているものがありました。これはなにか残酷なニュアンスの作品かと思えば、画家本人は「いや構図が矢を立てるとまとまるので」というトボけた理由で、画面構成から逆算して出てくる一種のシニカルなユーモアが導き出されていることを知りました。
彼はリンゴを平面展開させる作品を繰り返し描いていますが、静物が東洋的な画面構成のなかでどう配置できるか、を常に考えているというのです。
彼の作品はなにか一種の快適さとユーモアを感じさせるのですが、常に「画面空間」と「モチーフ(たとえばリンゴ)」の関係性を考え続けて飽きない彼の世界は、見ている私達もまた飽きません。
さて「構成」を意識して描くのは近藤亜美も同じです。彼女の描くのは「日常のもの」だと言いますが、その「日常」なるものはよく見ると大抵「非日常」的です。見慣れたものが、どこか居心地の悪いバランスで配置され、絵画があくまで絵画であることが強調されます。でも「モノとしてのアンバランス」は絵画的な絶妙のバランスに転化して、彼女の画面は色と構図のリズムをもって心地よく踊りだします。彼女はどこか小津の描く女性像に似た静かな佇まいですが、「画面」を作る細心の注意と巧まざるユーモアは小津の世界に通じるものを感じさせます。
北海道の寂寥感ある遊園地の夜景を描く葛西明子は特異な才能です。画面はスローシャッターを切ったカメラの夜景のようにどこか曖昧ですが、絵画しか出せないドラマチックな感傷を画面が伝えます。前の二人がどこか日常を計算で非日常に転化する余裕を感じさせるのに比べると、「誰もいない遊園地」という予め仕組まれた非日常的空間はもっと切迫した人生観・風景観を感じさせます。どこか調和的でない、崩れる寸前のスリルと、画家がそこを描かなければならない切実さが画面を貫いて、どこか感動的です。計算外の計算のようなもので描く葛西の世界があって、この3人の展覧会が独自のバランスを見せていると思います。
小津 航 OZU Wataru
小津は東洋美術の山水画、浮世絵、洋風画や⻄洋美術のモチーフなど過去の美術作品を参照し、東洋的絵画空間における画家とモチーフの関係を探索しながら制作活動を行っている。
昨今は「静物画」、「風景画」、「人物画」という絵画の基本主題を通じながら、東洋的絵画空間にみられる(画家とモチーフとの距離)や(絵画空間の設定)といった関係に注目をして東洋美術を再考するような制作を行なっている。
https://www.instagram.com/ozuwataru/
葛西 明子 KASAI Akiko
1983年生まれ。北海道出身・在住。武蔵野美術大学造形学部通信教育課程油絵学科絵画コース卒業。
油彩、アクリルによって自身の記憶の中にある風景を一枚の絵にコラージュするように描き出す。夜の光の世界と誰しもが抱える孤独というテーマを幻想的に表現している。
muni Art Award 2022 田中千秋賞 受賞
https://www.instagram.com/akikokasai_art/
近藤 亜美 KONDO Ami
2000年⽣まれ。東京都出⾝・在住。東京造形⼤学造形学部美術学科絵画専攻領域卒業。
空間(空と地⾯、壁と床、光と影)を⾯や形で捉え、⽇常を過ごす中で⽬にしたものや⾵景をもとにイメージしたモチーフを構成・配置することで、⽇常と⾮⽇常の狭間を⾒出すことを主軸に絵画を制作する。
muni Art Award 2022 ファイナリスト 土方明司賞 受賞
muni Art Award は2023年も開催。
応募期間:2023年2月1日(水)~4月4日(火)
詳細:https://www.muni-art.com/