三人展 クスミエリカ、里美穂、古川千夏
2022/09/16 - 24
@GALLERY SCENA. by SHUKADO
クスミエリカはデジタルコラージュ、里美穂は線で描き、古川千夏は七宝で立体で表現をしています。技法は三者三様であるが、それぞれの作品たちは奥深く広がっていくように見え、その世界に引き込まれそうになります。ぜひ大きな世界観を楽しんでいただきたいです。
超自然的存在と私達を結ぶもの
GALLERY SCENA の二回目の企画展として、クスミエリカ、里美穂(さとみ すい)、古川千夏の三人展を開催いたします。
写真を使ったデジタルコラージュ、アクリル絵具のタブロー、七宝とまったくジャンルの違う三人の組み合わせですが、どこか共通するのは作品の繊細なたたずまい、そして「自然」と人間の「想像力」が組み合わさった「超自然的存在」というテーマ性でしょうか。
むろん、三人とも若い女性ということもありますが、今時のアーティストは圧倒的に女性が多いので、今更驚くに当たりません。
クスミエリカは自然が作る不可侵の世界を見せます。立ち入り不能なもの、人が触れてはならないものだからこそ、私達があこがれ、癒される存在。彼女が自らの撮影との組み合わせによるイマジネーションで作った世界ですが、実は私達が森の奥深く、あるいは海の波の果てに直感的に存在を感じている私達を超えたものへの「畏れ」を可視化したように思われます。
里美穂は糸を描き続けていますが、初期に描いていた儚げで消え入りそうでどこか混乱を企図したような作風は影を潜め、より大胆な夢幻の域に鑑賞者を誘います。ときに花を、ときに自由で激しい奥行きを描いて、彼女の世界にどんどん引き込まれていきます。本人は「静けさ」を強調しますが、どこかに興奮を伴った不可思議な画面の仕掛けが単なる静けさ以外の陶酔感をもたらします。
古川千夏の有線七宝は純粋なる抽象芸術ですが、伝統技法を活かしつつもその線と色の組み合わせの展開が人智を超えた小宇宙へ誘うようで、奇しくも里見が表現した世界が次元を変えて出現したような深みと広がりを感じさせます。彼女の表現も年ごとに変化し深まって私達の美の感覚を呼び覚まします。
人知を超えたもの、どこかフラクタル図形を思わせるような三人の世界は、かつて私達の祖先が素朴に信仰した神や自然を、形を変えて見せてくれているようにも思われます。
現代アートを標榜してスタートしたGALLERY SCENAですが、アートは原初神と結びつき神を否定してもういちど神のそばに戻ってくる性質があるとするならば、今回の展示もまた一つの現代アートの視点として誇りを持ってお示しさせていただきます。(田中千秋)